これは少年と少年が微笑み逢うまでのお話



オレンジの馬車



   あるところに一人の少年がいました
   真っ白な髪を持ったその少年の世界は髪と同じように真っ白なのでした
   降り積もる悲しみに覆われて、大地は渇いてしまうのです
   少年はどこかで春の陽射しを待っていることも忘れて、おぼろげに立ち竦んでいるのでした


「おかえりアレン」
朝の食堂で久しぶりに顔を合わせた彼は、いつものように広い食卓を占領せんと皿を積み上げていた.
どうやら大袈裟な朝食は終盤に取り掛かっているらしい.残っているのはデザートのアイスだけだった.
「おはようございます」
人に好かれる愛らしい笑顔にももう見慣れた.
最初はどうにも危なっかしく思えたのだが、今の自分は彼の強さ≠知っている.
しかし、同時に危うく思えた理由にも気づいてしまった.

   少年が見上げる空は雲ばかりで、なにを見つめれば良いのか分かりませんでした
   それでも少年は歩き出さなくてはいけないのです


例えば、首を傾げたときにさらりと揺れる髪.
伏せられた瞼に行儀良く並んだ睫.
なにもかも見逃したくない.

   あるところに一人の旅人がいました
   世界中を転々とする名も無き少年です
   彼の持つコンパスは今真っ直ぐ細い道の彼方を指していました


「アレン、流石に食べ過ぎさ」
見ているだけですっかり自分の朝食を忘れていた.それほど目の前の彼はよく食べた.
アイスの入ったグラスを綺麗に空にしてなお、彼は好物を追加した.
「ラビの顔見たらなんだか食べたくなったんです」
続けて彼はこう言った.
「月では兎が餅つきしてるらしいですよ、日本のお話ですけど」

   針に従って進む先は次第に寒くなり、足元には雪が積もっていました
   少年はマフラーで口元まで覆い「寒い」と一言呟きました
   ふと見下ろすと雪の上には先人の足跡がぽつぽつ見受けられました
   思わず好奇心に駆られてしまった少年は足跡を追って走り出しました
   それはもう後悔しても遅いのです


そういえばもうすぐ満月か.
今夜の月は不完全な輪郭で街を照らすだろう.
満ちるまであと少し・・・、今が一番苦しくて切なくて、脆くて危うい時なのではないだろうか.
月に同情の眼差しを向けるのは、やはり失礼だろうか.

   進んだ少年はやがて前を行く少年を見つけました
   雪に同化してしまいそうな少年は小さな幅で、けれど着実に進んでいきます
   少年は肩を並べて歩くことに決めました
   偶然にも少年のコンパスは同じ方角を導いていたものですから


どうしても今夜は眠れなかった.
真夜中にドアが叩かれてふいに彼がこの部屋を訪れたのも随分前のことだ.
「眠れない」と申し訳なさそうに告げられて、なんと返したかは覚えていない.

   他愛もない会話をぽつりぽつり交わしながら二人は歩きました
   小柄な白い少年は何度も崩れ落ちそうになるのですが、けして歩を止めようとはしませんでした
   なので少年は、そのつど手を差し出し肩を貸しました
   はにかみながら告げられるありがとう≠ニいう言葉を密かに心待ちにしていたのです


どうにもらしくない.
走り出した心は止められない.
二回のノックで彼は扉の向こうから顔を出した.
「こんな時間にどうしたんですか?」
「・・・今日が満月ってしってた?」
訳も分からぬまま素直に窓の外を覗く彼が愛しい.

   歩いて歩いて、どれくらいたったでしょう
   少年は少年を知りました
   繋いだ手を離したくないと願う自身を後ろめたく思いました


「話があるんさ・・・」

   そして少年は自分が王子だと告げる決意をしました

   二人の向かう先には、柔らかい新芽が目覚め、陽色の花が咲いていることでしょう












  それは永遠に終わらない物語の一節












  ようやくラビアレ書けました(本命CPなのに・・・)
  こ、こんなんでどうかなっっ、苓那ちゃん(汗
  そして肝心の告白シーンを書いてない!(笑
  レイアウト見難かったらすいません;
   07.05.05